概要

旅館と感慨

日本の旅館業法(昭和23年7月12日法律第138号)では「旅館業」と「旅館営業」とでは概念が異なる。旅館業法にいう「旅館業」とは「ホテル営業」、「旅館営業」、「簡易宿所営業」、「下宿営業」の4種の営業の総称をいう(旅館業法2条1項)。そして、通常、単に「旅館」と言う場合には、このうちの「旅館営業」すなわち「和式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のもの」を行う施設のことを指す(旅館業法2条3項)。

旅館業を経営しようとする者は、都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区では市長又は区長)の許可を受けなければならない(旅館業法3条1項)。この際には申請書に営業の種別(旅館業法上のホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業、下宿営業の種別)を記載しなければならないが、これとは別に営業施設の名称も記載することとなっている(旅館業法施行規則1 条)。したがって、営業の種別については旅館営業として申請している場合であっても、営業施設の名称については「旅館」、「民宿」、「ホテル」、「ペンション」など経営者の設定に委ねられている為、実際には各個のイメージ戦略などから規模の大小、経営形態に関わらず自由に名乗っているのが実情でもある。そのため、「旅館」、「民宿」、「ホテル」、「ペンション」などの線引きは曖昧である。なお、許可の際の構造設備の基準など法令の適用については、営業施設の名称ではなく経営者の申請した営業の種別にしたがってなされることになる。

客室が和室であり、一部屋二人以上の設定である。商人宿と呼ばれる比較的低価格のビジネス利用主体の旅館(いわゆるビジネス旅館)では、古くから1人1部屋利用が比較的多いが、観光旅館や温泉旅館では(とくに高級旅館の場合)、1部屋を2人以上で利用することを前提とした運営となっているところが多く、1 人での宿泊を認めない場合も多い。泊まれたとしても1部屋の1人利用は大幅に割高にならざるを得ないのが現状である。ただし、原則2人以上での宿泊のみを認めている観光旅館や温泉旅館でも、旅行業者が旅館と契約して行なっている一人旅向けの宿泊プランで予約すれば、1人1部屋の宿泊ができるが、やや割高の感は否めない。

旅館では一般に、利用者に貸し出す浴衣を客室内に用意している。ただし、商人宿では浴衣を用意していないところも少なくない。寒い時期には、上着として羽織(気軽にはおれ丈が短い)や丹前(防寒性が高く丈が長い)が添えられる。廊下や宴会場など、館内で着用可であるのはもちろん、温泉街では浴衣で外出することも可能。かつては宿に内風呂が無く、入浴には共同浴場に通うような湯治場もある。温泉街では一般的にみられる傾向である。また現在では旅館のPRにもなるうえ、温泉地の湯の町情緒の向上にも一役買っている。一歩部屋を出るにも外出に相応しい服装であることを要求されるホテルとは異なる点である。

旅館とインターネット

宿泊施設とインターネットの関わりというと、やはり欧米が先行していた影響でホテルに関する繋がりが深い。ホテルの設備紹介や周辺マップ、施設説明から予約までできることがインターネットの黎明期より可能であった。この波はもちろん日本にも波及し、日本に点在する旅館にもインターネットへの掲載が始まった。しかしながら、古い文化を受け継ぐ日本の旅館では多くが当初はインターネットの存在をなかなか受け入れられなかったのも事実である。昨今の事情で、逆にインターネットを活用しないとたとえ古い歴史ある旅館であったとしても、なかなか客足を伸ばすことは難しくなっている。


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